雨季の始まり マウベシのコーヒー農家の新たな1年

たつ

2023年の収穫シーズンが終わったマウベシのコーヒー畑では、また新たな1年が始まっています。

今年はエルニーニョ現象の影響で雨季の到来が遅れ、12月初旬にようやく豪雨がありました。乾季の終わりと共に降り注ぐ強い雨は、コーヒーの花が一斉に開花する合図となります。焙煎したマウベシコーヒーの深い香りとは対照的に、花は畑全体に繊細で甘く、優しいジャスミンのような香りを広げます。この香りは周囲の蜂たちをも惹きつけ、花から花へと飛び回らせます。(ちなみにアラビカコーヒーは自家受粉なので、蜂の媒介の役割は必要としません。)

コーヒーの花は年に一度のこの時期にしか咲かず3日ほどで散ってしまうため、開花を目撃するのはコーヒーの町に住む人たちにとっても貴重な機会です。また、花が落ちた後にコーヒーの実が育ち始めるため、開花の様子はその年の気候や栽培条件を反映し、収穫量を予測するための重要な指標となります。そのため、農家は開花の時期や状態に特に注意を払い、豊作の兆しを探します。

パルシックはJICA草の根技術協力事業の助成をうけ、コカマウ組合とともにコーヒー畑の改善事業を実施しています。この事業の中で、苗床で約1年かけて丁寧に育てられた新しいコーヒーの苗木を、雨季の間に土壌が柔らかくなった畑へ植え替えるのも今の時期です。植え替えから収穫までは約2~3年を要し、成熟した木から充分な実を得るまでにさらに年数が必要です。東ティモールのコーヒー畑では木の老朽化が深刻な課題となっているため、台切りや新苗の植え替えで、畑の若返りに国を挙げて取り組んでいます。このコーヒー畑の改善事業が5年目に入り、1年目から活動に参加していたコーヒー農家の畑ではようやく収穫をもたらす段階に入りつつあります。

今年7月の有機監査の際にレボテロ集落のミゲルさんは「コーヒーの花が一斉に咲くのではなく、木々が様々なタイミングで咲くようになり、これまでの経験が当てにならなくなっている」と言っていました。それでも今年は、昨年に比べて台切りした木も十分に成長し、先日私が訪問した日には、ちょうど畑のコーヒーの花が以前のようにほぼ同時に満開の状態で、ミゲルさんも来年の収穫には期待をしているとのことでした。

マウベシのコーヒー農家たちは収穫が終わったばかりのコーヒー畑で翌年の収穫に向け少しずつ動き出しています。そして5年後、10年後も持続的に高品質のコーヒーを消費者に届けるために畑の改善を少しずつ着実に進めています。彼らの地道な努力によって、私たちは日々豊かな一杯のコーヒーを享受することができるのです。

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