2002年5月、東ティモールは国連統治の3年弱を経て、正式に独立国となりました。パルシックは、東ティモールの唯一の輸出品であるコーヒーの品質改善を通じて、独立後の東ティモールを支えることにしました。事業の調査のために伊藤淳子(現東ティモール事務所代表)が東ティモールに渡り、同年5月末、アイナロ県マウベシ郡のコーヒー農家を訪ねました。
山の中腹にポツンポツンと農家が点在し、周りをシェードツリーの林が囲むのどかな風景でした。当時、コーヒー農家のおじさんたちと話していると「インドネシアによる占領時代に、夕方に畑の端、山のふもとにトウモロコシなどの食糧を置いておくと翌朝には無くなっていた」というようなことをよく聞きました。山中で独立闘争を担っていた人びとをこうして支えていたことを誇りにしているのでした。
農家を訪ねると必ずコーヒーを準備してくれました。湧水を汲んできて、薪で火をおこし、自家用にとってあったコーヒー生豆を卵焼器のようなフライパンや中華鍋で炒って、臼で突いて粉状に。グラスにその粉と砂糖をたっぷり入れて、熱いお湯を注ぎます。ややドロッとしていて甘く、風味があって美味しいコーヒー。「このコーヒーならいける!」と思ったのが、マウベシのカフェ・ティモールとの出会いでした。
マウベシのコーヒー農家は農業協同組合コカマウ(COCAMAU)を組織し、紆余曲折の17年を経て、次第にしっかりとしてきました。当時30-40歳代の中核農家は少しずつ世代交代もしています。久しぶりに現地を訪ねると当時の農家さんはすっかりお爺ちゃんになり、好々爺のように笑いかけてくれます。