Story 2 カフェ・ティモールを作る人

マウベシコーヒー生産者組合=コカマウ(COCAMAU)

コカマウは2002年に組織され、最初は34世帯のメンバーでスタートしました。2018年現在、マウベシ郡の6村24集落へ広がり、約580世帯の農民が参加しています。平均1ヘクタールあまりの小さな畑で家族単位の小規模栽培をしています。コカマウ組合は毎年およそ100トンのアラビカコーヒーを出荷しています。

コーヒー生産者の声

フランシスコ・ダ・シルバ・バルボサさん
「独立後の国づくりに希望をもてるように」

フランシスコ(通称シコ)さんとパルシックとの出会いは2001年。独立回復を決めた東ティモールのコーヒー産業について調査していたとき、コーヒー生産者の1人としてインタビューに応じてくれたのが始まりでした。その後、結成された生産者グループの会計として類まれな才能を発揮し、マウベシ生産者協同組合の組織化になくてはならない存在となりました。

2002年当時、シコさんは次のように語っていました。

「インドネシア時代でもこのあたりは平和だった。ただ農民は知識もなく取り残されていた。独立のためにともに犠牲を払った仲間たちは、いまでも貧しさにあえいでいる。わたしには彼らが独立後の国づくりに希望をもてるようにする責任がある。」

ヴィセンティ・マリア・ソウザさん
「道路や水へのアクセスの良いところに家を建てることが夢」

ハトゥカデグループの会計を担当しているヴィセンティさんは、バリトンの声がとっても魅力的。ひと回りも年下の妻ロザさんとの間に上は21歳から下は5歳まで、11人の子どもがいます。毎年メンバーに提出を義務付けている生産者アンケートは、文字の読み書きのできないメンバーから聞き取ってヴィセンティさんが代筆します。「メンバー一人ひとりを探して家まで行くのは大変」といいながら、美しい筆致でどこよりも早くアンケートを提出してくれます。

ハトゥカデ集落生まれのハトゥカデ育ち。生い立ちを聞こうと手始めにご両親の名前を聞いたところ、11歳のときにお母さんを亡くし、実父は後妻をとった、ヴィセンティさん自身は祭りごとに差し出す財産の代わりに親戚に差し出され養父母のもとで育った、と大変に複雑。インタビュー者の理解がついて行かずに断念しました。

組合に加入する前と比べて生活に大きな変化はないけれど、コーヒーについてはだいぶ変わったといいます。

「以前は家の近くまで買いに来る仲買人にパーチメントで売ったり、チェリーを村の中心まで運んで売っていた。いまは自分たちの組合があるから近くで計量できるし、遠くまで重たいコーヒーを担いでいかずに済む」。

ヴィセンティさんの夢は、道路や水へのアクセスの良いところに家を建てること。

「これからもコーヒーはずっと送り続ける。わたしたちの状況につねに関心を払い続けてほしい」。

ヴィセンティ・ダ・コンセサオン・シルバさん
「組合とは、子どもたちに遺せる未来」

ヴィセンティさんは、2003年にクロロ集落(26名)がグループを結成したときから毎年、グループの代表に選ばれています。08年1月の選挙で5回目の再選が決まったとき、あまりの荷の重さに涙を流してメンバーに協力を仰ぐ姿が印象的でした。

無口で人望の厚いヴィセンティさん。実はクロロ集落の出身ではありません。1968年、クロロの隣集落ハトゥブティで、6人兄弟の末っ子として生まれました。お父さんは街に住むポルトガル人の家で料理人をしていました。中学校を卒業したヴィセンティさんは、89年にインドネシア公務員の資格を得、軍人や公務員へ支給されるコメの倉庫管理をしていました。クロロ出身のドミンガスさんと結婚し、彼女の家族の畑があるクロロに移り、クロロの“マネ・フォウン(テトゥン語で婿の意味)”となったのです。8人の子どもがいます。

ヴィセンティさんにとって、組合とは子どもたちに遺せる未来だといいます。

「子どもたちの将来にとって一番心配なのが、学校が遠いこと。小さい子どもたちは通学途中にお腹がすいてしまう。学校に行かせるには親が送り迎えをしなければならないが、畑仕事もあってままならない」。

人前で多くを語らないヴィセンティさんにとって、最大の困難は、信頼を寄せてくれるメンバーが言いたい放題要求をつきつけてくること。それでも本人の信念は強い。

「自分たちが死ぬまで組合を存続させて、その後を子どもたちに引き継ぎたい。ひとりで多くのことはできないが、みんなで力をあわせればきっとなにかできる。子どもたちのために、いまは苦労が多くても組合は手放したくない」。

フェアトレードのコーヒー生産者を訪ねるオンラインツアー<ダイジェスト>

エルダウトゥバ集落のジョアンさんを訪ね、コーヒー畑の様子や加工のシーンを見せていただきました。(2020年8月収録)

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