スリランカ出張報告 希望のコンポストセンター
2023/02/14
みなさん、アーユーボーワン(シンハラ語でこんにちは)、フェアトレード部のロバーツです。1月末から10日間ほど、パルシックの商品「アールグレイ紅茶」「ルフナ紅茶」の産地スリランカへ出張に行ってきました。私にとってスリランカ渡航は、実に4年ぶり。
みなさんもご存知の通り、スリランカは2022年初めから経済危機に直面しています。そんな最中のスリランカに行ってきました。
到着後、コロンボのスーパーに行ってみると食料品や日用品の価格は、4年前の2倍にも3倍にも値上がっているように感じます。経済悪化から発電用燃料が限られ、地域によっては毎日計画停電があるそうです。紅茶の産地デニヤヤで、私がホームステイをさせてもらったのはパルシックのスタッフ、サラットさんのお家。夕方18時ごろに到着すると「今、停電中なんだ」とのこと。暗闇の中いただいた甘くて美味しいミルクティーがほっとした気持ちにしてくれました。停電は約2時間続くとのことで、夜ご飯の準備にかかっている台所では、サラットさんのお連れ合いのチャーミラさんが懐中電灯のあかりを頼りにお料理をしてくれていました。
スリランカに到着した翌日に何気なくニュースを見ていたら流れてきたのは『スリランカの紅茶生産量、2022年は26年ぶりの低水準に』という見出しでした。
デイリーミラー:https://www.dailymirror.lk/breaking_news/Sri-Lankas-tea-production-hits-26-year-low-in-2022/108-252794
この収穫量激減の背景には、2021年に前大統領による「化学肥料や農薬の輸入を禁止し、国内の農業をすべて有機農業へ転換する」という大胆な政策による影響があるといわれています(*1)。有機農業の方針自体は良いことだとしても、あまりに急で、あまりに野心的な政策だったため、農業従事者などは混乱に陥ったと聞いています。
*1 発令から7か月後に撤回されたが、政府が化学肥料を輸入して補助金を使って安く農家に提供するという仕組みは再開されておらず、化学肥料代が以前の5倍以上にも跳ね上がっているため(2023年1月時点、デニヤヤ地域)、非有機の小規模農家は化学肥料を施肥できない状況が続いています。
大変な生活や暗いニュースの中でも、アールグレイ紅茶・ルフナ紅茶の茶葉の産地デニヤヤでは、現在75世帯が共同出荷グループ「エクサ」に参加して活動しています。茶の有機栽培のみならず、エコツーリズムの受け入れ、スパイスや果物・野菜など有機農作物の共同販売、今回の経済危機では地域の小学生への朝ごはんや文房具の提供などの地域のための活動にも勤しんでいます。パルシックの現地スタッフとの打ち合わせでは「農家さんと地域にあるクジャクヤシ蜜を加工してお菓子をつくって、販売してみたい!」などと前向きな意見がいくつも出ました。エクサの紅茶の生産量については、まだまだ課題が(というか、一番大きな課題で)あるものの、有機の茶畑に関しては、慣行栽培と比較して、ニュースになったような収穫量のダメージはなかったと農家のウパセナさんが教えてくれました。
「エクサ」の活動で最も大事といって過言ではないのが、コンポストづくりです。各農家で牛を飼い牛のフンで堆肥を作っている方もいますが「自宅では牛の面倒が見られない」などといった方のために、組合でコンポストセンターを運営しています。
2017年からスニルさんがずっとコンポストセンターの管理人という重役を担ってくれています。スニルさんは毎日、1日も休まずに、朝8時から夕方4時まで仕事をしています。5頭の牛(4頭が雌で1頭が雄)に餌をあげ、健康の管理に牛舎の掃除、堆肥や液肥をつくり、午後にはグループで共同購入したミニトラックで畑に出かけて牛の餌となる草をたくさん積んで帰ってきます。その他、牛の繫殖のための管理、コンポストの販売(エクサのメンバー以外の地域住民にもコンポストを販売しているところもまた素敵です)、など、やることは山積みです。コンポストセンターを訪れた人がみんな驚くのは、匂い。スニルさんの行き届いた掃除のおかげで、全然嫌な匂いがしないのです。コンポストセンターのすぐ横には、(コンポストセンターではバイオガスでお湯を沸かせるようになっている!)スタッフの休憩小屋がありますが「匂いも気にならないので、コンポストセンターの中でお茶を飲もう」とすすめてくれました。ちなみに、スニルさんが疲れたとき、体調を崩したときはどうしているの?と心配になって聞いてみると、「息子が代わりに牛の面倒をみてくれるよ」と教えてくれました。有機農業にはかかせないコンポストセンターです。
パルシックは2023年度、コンポストの生産性や質をあげて「紅茶の生産量の低下」の解決にむけて、スニルさんはじめエクサのメンバーとともに取り組みます。