国際コーヒー協定、15 年ぶりに更新
2022/08/10
国際コーヒー機関(ICO= International Coffee Organization)は、60 年の歴史を持つ国際コーヒー協定を15年ぶりに更新し、2022年6月9日に「国際コーヒー協定2022」を発表しました。その中身をみてみたいと思います。
国際コーヒー協定2022 / INTERNATIONAL COFFEE AGREEMENT 2022
https://www.ico.org/documents/cy2021-22/ica-2022-e.pdf
その前に・・
国際コーヒー協定とは?
1962年に世界のコーヒー価格の安定と需給調整のため、主にはコーヒーの輸出割当を制度化するために制定されました。生産国と消費国の政府による多国間協定として機能してきました(割当は1989 年に交渉が決裂し、廃止された)。2022年度現在では、国際コーヒー協定加盟国が世界のコーヒー生産量の93%、世界消費量の63%を占めています。
国際コーヒー機関(以下、ICO)とは?
ICOはコーヒー協定を協議・実施する国際機関として1963年に設立されました。コーヒー生産国と輸出国の両方が加盟している唯一の国際的な政府間組織で、2022年8月現在の加盟国は、生産国43か国、輸出国33か国。コーヒー価格などの情報の収集・報告をしたり、最近では世界的な景気後退がコーヒー業界に与える影響や、コロナウイルスのパンデミックが生産者に与える影響の調査結果などを報告したりしています。日本や東ティモールも加盟しています。
さて、話は協定の更新に戻ります。今回の改定のポイントは、ICOが初めて、民間セクター(小売業者、ロースター、メーカーなど)を加盟国として迎え入れた点です。ICOの事務局長のヴァヌシア・ノゲイラ氏は「世界の有名ブランドや大手メーカーに加えて、小規模農家も参入することで、コーヒーのバリューチェーン全体が直面している最大の課題に、誰にとっても公平な方法で対処できるようになったことを意味します」と述べました。
今まで、世界大手コーヒー企業の多くが経済的・社会的持続可能性を徹底的に主張してきたにもかかわらず、貧困、食糧不安、環境悪化など多くの課題が依然として世界中のコーヒー農家に影響を与え続けている現状が、民間セクターの参加を義務づけた背景にあるようです。
コーヒーバロメーター2020年版によると、世界のコーヒーの約半分はわずか5社によって輸出され、世界のコーヒーの約35%はわずか10社により焙煎されています。一方、生産国は輸出時にその価値の10%未満しか受け取れていません。さらに零細農家(約1,250万人)に渡る割合ははるかに少ないと、同文書は述べています。新協定は、このような業界の構造を抜本的に改革しようと2020年に出された声明に沿う形で発表されました。
コーヒーバロメーター2020年版 / Coffee Barometer 2020
https://coffeebarometer.org
2020年に出された声明 – ICO Outlines Sector-Wide Participation Amid Ongoing Coffee Price Crisis(DAILY COFFEE NEWS) https://dailycoffeenews.com/2020/11/04/ico-outlines-sector-wide-participation-amid-ongoing-coffee-price-crisis/
ICOの加盟国の動きとしては、トランプ政権の「アメリカ・ファースト」政策に伴うアメリカの2018年の脱退、中米の主要生産国グアテマラの2020年の脱退、東アフリカの主要生産国ウガンダの2022年の脱退などがあげられます。グアテマラは「より公平なコーヒー貿易を促進し世界中の小規模農家を支援する」という目的のもと脱退しました。
コーヒー業界全体が抱える課題に向かって、官民が垣根を超えて協力し、構造を変えていけるのか。パルシックは東ティモールのコーヒー農家さんたちとともに、具体的な活動に取り組みながら、日本の消費者のみなさんと本当にフェアなコーヒー市場のあり方を考え続けたいと思います。
Landmark International Coffee Agreement 2022 Embraces Private-Sector Participation
https://dailycoffeenews.com/2022/06/09/landmark-international-coffee-agreement-2022-embraces-private-sector-participation/