ファストファッションからスローファッションへ

ねもと

「GUの服はワンシーズン着たらもう着ないよね」

大学生のころ、同級生がそう話しているのを聞いて衝撃が走った記憶がある。服といえば、穴が開くまで、落ちないシミできるまで、あまりにもくたびれて見えるまで着続けるものだと思っていたからだ。大したダメージでなければ捨てずに寝間着に型落ちするだけのこともある。
大学生の時分は(海外育ちなもので)「日本人のおしゃれのABC」を学んでいる最中で、周りから逸脱していることを言うのが怖く、適当に話をあわせていたような気がする。

確かにファストファッションといえば「最新の流行を取り入れながら低価格に抑えた衣料品を、短いサイクルで世界的に大量生産・販売するファッションブランドやその業態(出典:wikipedia)」を指すわけで、そもそも私のように何年も着続ける想定のもと作られていないのだろう。でも個人的にトレンドに乗ろうという意識はなかったし(みんながこぞって同じ格好することへの忌避)、まだ元気な子たちを捨てる気にもならなかった。

大学生のころの自分はそれこそ「おしゃれ」にあこがれもしたし、貧乏学生をしていたから、安さを求めてファストファッションに手を出していた。ただ最近は稼ぐようになったこともあり、フェアトレードという仕事についていることもあり、新たに買うものは今までより高くとも良いものを。そして長く使いたい、と思うようになってきた。労働の問題、環境の問題、いろいろ考えるべき安さの裏に潜む理由にちゃんと目を向けるようになったからだ。

そうやって新たな服が1着、2着と増えていくタンスのなかに、昔買った安いものも存在する。服はやはりぼろぼろになるまで着るものだから、何年前だかに買ったGUのシャツを先日事務所にも着ていった。黄色がベースの花柄のシャツは、「明るい」といろんな人が褒めてくれて気分がよかった。

お手軽なものもいいけれど、今着ている服、今飲んでいる紅茶、今食べているご飯、その一つ一つがぽっと出てきたわけではなく、たくさんの人がかかわって成り立っているのだと考えると、改めて当たり前のことなどないのだと。考えるべき問題はたくさんあるけれど、まずは自分が一度手に取ったものを大切に使っていきたいと思う。

おすすめコラム